ベリーメリーブツヨクリスマスプレゼンテーション

童話風クリスマスリース


前略、もうすぐクリスマスだ。
今頃世間の良い子たちは、クリスマスプレゼントとして欲しい品を、サンタクロースへの手紙に書き記している頃だろう。
かく言う私もサンタクロース宛の手紙を書いていたのだが、これがなかなか難航している。
もちろん私は物欲にまみれているし、欲しいもの自体はあれこれと思い浮かぶのだが、その中から一つ選んだものを与えると言われると意外に答えられない。
そんな時、咄嗟に思い浮かぶ便利な代物が、ご存知『金銭』である。
本来金自体は、善も悪もないただの物質に過ぎないのだが、『欲しいもの』に対する回答として持ち出すと、典型的汚い大人テンプレート殿堂入りレベルの文言になるということは、流石の私も理解している。
あまり率直に書くとサンタクロースの悪い子フィルターに引っかかってしまう可能性が出てくるのだ。
 
そう考えた瞬間、ふと一つの疑問が浮かんだ。
自分は果たして良い子の基準を満たしているのだろうか。
改めて自らの素行を思い返してみると、深夜にバニラアイスを添えたアップルパイを食べる、スティックカフェオレを一日に三杯も飲むなど、今年中に積み上げてきた罪深い行いが頭を過る。とても美味しかった。
 
不安を覚えた私は少しでもいい子ポイントを稼ごうと、欲しいプレゼントに物品ではない、所謂『お金で買えないもの』を選んで手紙を認めてみた。
長くなるので結論だけ言うが失敗だった。
それどころか書く手紙全てが闇に属するものとの契約書と化した。
「清い心を寄越せ」「美しい魂を我が物としたい」など悪魔しか言わないような台詞の数々や『無限の体力を持つ強靭な肉体が欲しい』といった闇堕ち確定の取引で覆い尽くされた手紙など、フィクション以外で読んだのは初めてだった。
完全に頼む相手を間違えているし、受け取ってしまったらとんでもない代償を支払わされそうだ。
単純に自身の善性をプレゼンするという観点での模範解答は『私に欲しいものなどありません。なのでどうか世界に愛と平和をお与えください。』だろうか。
だが私の場合この回答は、媚を売るためだけにひねり出した心にもない見え透いた嘘なので、いい子ポイント加算はあまり期待できそうにない。
 
そもそも良い子とは何なのか。減点方式なのか加点方式なのか。定義と評価基準を明確にしていただきたい。 
だいたい形のないプレゼントなどどうやって贈与するというのか。
クリスマスの朝、枕元にアクティベーションキーが記された紙でも置かれているのか。
事前に登録した任意のメールアドレスに愛と平和のダウンロード先URLでも届くのか。
ダウンロードしたAitoheiwa_Installer_1225.pkgを解凍、利用規約に同意しユーザー認証をした後本体を再起動しろとでも言うのか。
アップデートでいつの間にか仕様が変わってしまう事を私は知っているぞ。
 
そもそも冷静に考えてみると、プレゼントに購入可能な物品を選ぶことはサンタクロースにとっても悪い話ではない筈だ。
例えば善良な子供達が皆揃って、毎年毎年プレゼントに『世界を愛で包む光の翼』だの『地平線を翔ける風のような自由と平等』が欲しいなどと言い出した場合、サンタクロースサイドが頭を捻って、大喜利に等しいプレゼントを考えて用意しなければならなくなるのだ。なぜかサンタクロースと全く無関係なはずの両親が冷や汗をかく羽目になる。
品物を指定して要求することは、もはや親切とすら言えるかもしれない。
 
だからもうポイント稼ぎはやめる事にした。
おそらく自分に正直な事が一番なのだ。
物欲が邪悪なわけでも、金銭で購入できない物を求めることが清廉なわけでもない。
何より『良い子』と言う曖昧な概念に縛られ、本当に欲しいものを押し殺す事はサンタクロースの望むところではないだろう。
そう言うわけで、心置きなく物欲金銭欲にまみれた手紙を書くことにする。
 
ところで子供って何歳までのことを指すのだろう?
 

両翼アピール

それなりに悩んで描いた翼がほぼ掻き消されて大変悔しい思いをした。