季節外れではない。

アポトーシスの王

ハロウィンが終わってから徐々に高まっていたクリスマスムードも、12月半ばを過ぎればいよいよ本格的になってくる。その上早いところでは、しめ縄や鏡餅など正月用の品々も店頭に並び始め、世間はすっかり冬の二大イベントに向けた準備を始めている。
最近は冷え込みも本格的になり、おかげで布団からの脱出難易度も随分と跳ね上がった。寝ぼけた脳髄に二度寝を囁く卑劣な布団との激闘の末にようやく1日が始まるせいで、気分良く目覚めようとアラームに設定したお気に入りの曲がだんだん嫌いになってきている。やはり戦いは虚しい。
 
そんな冬の到来を強く感じる今この時期に、季節外れな秋の権化みたいな絵をあげてしまったわけだが、これからそれを全力で正当化するフェーズに移ろうと思う。
まずこの紅葉の色。見ようによってはクリスマスカラーの赤に見えないだろうか。
色味はモニターによって見え方が異なるのが常であるし、そうでなくとも朱色などは赤とオレンジのどちらと認識されてもおかしくない繊細な色合いだ。というか赤とオレンジとかほぼ同じようなものだし誤差の範囲だきっと。
 
そもそも一度考えてみてほしい。『秋』とは一体何か。
何言ってんだこいつみたいな顔をされそうだが、形のないものに対して時折こう言った問いかけをしてみるのは重要な事だ。実際、気象学的には9月から秋であるとされているらしいが、暦の上で秋の始まりとなる立秋は8月の初旬だ。このように基準と定義によってある程度ブレが生じている。
そしてGoogleで『秋』を検索してみると、2021年の秋は9月23日から12月22日であると表示される。『秋』を秋分の日から冬至までの間であると定義しているらしい。そう、つまりかの大賢者Google大先生は今を秋だとおっしゃっているのだ。
 
それにしても、まだまだ不快な蒸し暑さの残る9月終盤と、手先も悴む12月を『秋』という季節で一括りにするのは少ししっくり来ないものがある。開放骨折とささくれを同列に『怪我です』と表すような気分だ。他にも『クリスマスの3日前まで秋である』と表現されるとどうしても違和感を覚えてしまうし、『夏休みが終わったら秋』という言葉に納得できるかと言われるとそれも少し難しい。結局のところ季節に対する認識は、イベント事に紐づいた印象や思い出、暑さ寒さと言った感覚的なものに依存するところが大きいように思う。
よって、所謂『季節感』を何に見出し、何に季節の訪れを感じるかについては、触れてきた文化や地域によって差異が生まれるのは必然だろう。それはつまり『季節外れ』という概念は、一般論をベースにした確固たる基準などない代物であることの証左に他ならず、何かを明確に『季節外れである』と証明することはなかなかに困難であるといえよう。雪見だいふくを夏冬どちらの属性に分類するかが人それぞれのように、クリスマスソングを耳にすると紅葉を思い浮かべる人がいたってなんら不思議ではないのだ。
 
さて、これまで長々と書き綴ってきた根拠から、この絵が季節外れとは言えないことはすでにご納得いただけたと思うので、本来これ以上言葉を重ねる必要はないのだが、締めの言葉として最後にあえて言うならば「何事も少し早めに取り掛かろう」である。