不器用の遅筆仕立て~デッサン狂いを添えて~

楽しいお菓子作り
今週のお題「チョコレート」

地上がバレンタインおよびホワイトデーの支配下にあるこの季節、私はその支配を甘んじて受け入れ無心で製菓活動に勤しんでいる。生チョコレートやダックワースなどの菓子やデザートを、作っては消費しをひたすら繰り返し、身に秘めた小宇宙を糖分で満たして暮らしているのだ。

 

さて、バレンタインの菓子と言えば、やはり定番はチョコレートを使用したものだろう。CMやレシピ特集など、様々な場所にチョコレートに関する情報が溢れ、それに伴って目にする機会が増えるのが『ガナッシュ』という単語である。
ガナッシュは温めた生クリームとチョコレートを混ぜ合わせたチョコレートクリームで、雑に言うと固める前の生チョコ、トリュフの中身だったりマカロンの間に挟んであったりする柔らかめのチョコレートなのだが、この『ガナッシュ』という名前、Wikipediaによるとフランス語で『間抜け』という意味があるそうだ。
ガナッシュ」はフランス語で「」を意味するが、「間抜け」という意味もある。フランスで、チョコレートを調理していたあるアプランティが誤って熱した生クリームを入れてしまい、親方のシェフが「ガナッシュ!」と怒鳴ったことに由来するという[5]
 
ガナッシュの生い立ちは、失敗から思わぬ成果が得られる好例であると同時に、『美味しい』は何物にも勝るという、揺らぐことのない宇宙の真理をも証明している。
そう、美味しいか美味しくないか。この一点が非常に重要であり、以前私がクリスマスに作った失敗ババロアに足りなかった点である。失敗の仕方が違っていれば、あのババロアにも何かしらの名前がついて、世界的な定番メニューになる可能性もあったかもしれない。
そんなことが起こったときのために、私もなにか料理につける名前を考えておきたいところなのだが、どうにもしっくりくる物にならないのである。
如何せんガナッシュはフランス語なので何の違和感もないが、慣れ親しんだ日本語で、同じ様な名付け方をしようとすると『カスタードのドン引き仕立て』やら『アップルパイのないわー添え』『ふざけるなクリームのダックワース』などという、前衛的かつ挑戦的なネーミングしか浮かんでこないのだ。
しかし様々な商品や情報が溢れる今の時代、そのくらい尖っている方が話題になって良いのかもしれない。
 
それに日本語に親しみのない外国人にはオウソークールと意外に受け入れられる可能性もある。
Apple pie with JapaneseNIE-WAR
こんなふうに表記されると少しかっこいい気もしてくる。おそらく発音はンヌァイゥワァーのような具合だろう。そして『ドン引き』はおそらく『ドンビック』などと、各々の国で発音しやすい様、少し訛って定着するのだ。なかなかに味わい深い。
いずれ菓子の名になると想定して聞くと、いかなる罵詈雑言もお洒落で美味しそうに感じられるかもしれない。
 
この様にチョコレート及ガナッシュは『失敗を恐れずグローバルで多角的な視点を持つこと』の大切さを教えてくれる奥深い存在である。何より美味しい。
私もこれに習い、どうすれば美味しく失敗できるのかの研究に力を注いで行こうと思うのだが、結果はあまり芳しくない。美味しく失敗することを成功させるには、やはり数々の失敗が必要なのだろうか。