ひまわりは美しく、様々な意味で強い。

f:id:ikusiadukasuos:20200925233257j:plain

数年前、ひまわりを育てていた時の話をしようと思う。

何故9月も終わろうという今になって、夏の化身のようなこの花の話をするのかと言うと、それは今回綴る内容が『この時期のひまわりとの思い出話』だからであって、決して私が遅筆なせいで、夏に間に合わせたかった絵が完成しなかったからではない。

 

当時私はひまわりでできた道に憧れていて、庭にある小道の両脇にひまわりを植えてその雰囲気を味わおうと考えていた。
多少のばらつきはあるものの、ひまわりは何の問題もなく大きく育った。
それはもう本当に大きく育った。
地面の高低差も手伝って、開花した頃には私を見下ろすほどの高さにまで成長していた。
ひまわりのサイズはもちろん知っていたが、安価な種だったこともあり、そこまで大きくはならないのではないかと、正直なところ甘く見ていた事は否定できない。
なんとなくだが『野望のために生み出した化け物に自分が襲われて最期を迎えるマッドサイエンティスト』の気持ちが少しだけ分かった気がした。
『命あるものを都合よく制御しようという考えは奢りである』と突きつけられた夏であった。
ところで、私のPC『みおろす』をわざわざ『見下す』と変換してくるのだがどうしたのだ。
『育てた花々に見下される。』
読みは間違ってないはずなのに、字面を見ていると心が傷つくな。
みんなで私の陰口叩いてそう。賢く育ったようで何よりだ。
 
ともあれ青空に映える大輪のひまわりは、鮮やかに夏を彩ったわけだが、時は過ぎ季節は巡るのが世の理。
どんなに力強く咲き誇ろうが、盛りが過ぎれば花は枯れるものだ。
『散り際』という言葉があるように、花の終わりには美学がある。
桜ははらはらと花びらを舞い散らせ、椿はまるで討ち取られたかのようにぼとりと花を落とす。
ではひまわりはどうかと言うと、多くの一般的な植物同様、葉と花が茶色く枯れ萎れるのだが、花中央の黒い部分(筒状花?というらしい)や茎の存在感は、割としっかりと残るのだ。
普段から面倒ごとを先延ばしにしがちな私は『わざわざ手を加えなくても、放っておけば、いずれ茎も萎びて土に還しやすくなるだろう』などと考えていたのだが、これが間違いだった。
ひまわりの茎は一向に萎びる事なく、あたかも弁慶が如く直立し続けているのだ。
その生き様?死に様?には感嘆せざるを得ないが、正直うちの庭でやらないでほしいと言うのが本音である。
さて、直立するひまわりから花と葉を取ったらどうなるか。
端的に言うと『棒』である。
もう少し丁寧に言うと『先端に何か黒い物が垂れ下がっている棒』だ。
つまり、私を見下す程度の高さをほとんど保ったまま、ひまわりは棒になるのだ。
そして当たり前ではあるが、棒になったからといって、別に本数が減ったりすることはない。
要するに道の両脇に私を見下すほど長い棒が林立する事になる。
その様を言葉で表すならば
『落ちてきた人を串刺しにするタイプのトラップ』か『定期的に侵入者を串刺しにして見せしめにする為の場所』又は『定期的に生贄を串刺しにして誰かに捧げるための場所のどれかになるだろう。
特にこの季節特有の曇天時など、天気が悪いと更に雰囲気でてしまうのだよね。
 
何れにせよこのままでは人間に対する敵対アピールになりかねないので、私は急いで庭を片付けることにした。
力強く立っている茎は、見た目の割に引き抜くことはそう難しくないのだが、問題はここからだった。
この茎、折れないのである。
普段ニンテンドースイッチより重いものを持たない私の力ではとても折れない。キャスター付きの椅子でくるくる回っている暇があったらもう少し体を鍛えておくべきだった。
『花の茎が手折れない』
そう聞くと、妖精さんか何かなのではと心配になるかもしれないが、そういう事ではなく単純に茎の方が硬いのだ。
『庭用の細いハサミなどは全く歯が立たず、枝切り鋏を持ち出してようやく切断するに至った』と言ったら硬さのほどは理解していただけるだろうか。
あの茎ならば駆け出し勇者の武器程度にはなり得たのではないかな。序盤のモンスターくらいなら退治できそうだし。
まあどちらかというと私は退治される側だから別にどうでもいいが。
 
後日調べてみたところ、どうやらひまわりの茎は長く放置すると硬化してしまうものらしい。メーカーによっては明記されているし、なんのことはなく普通に私の無精さが仇となっただけの話である。
やはり怠惰は大罪。そんな私が、地上の太陽を手にするなど100年早いという事なのか。
 
だが私は心を入れ替えた。機動力を身につけた私は先延ばし癖に負けず再び太陽を手にして見せる。
その証拠に、今から来年育てるひまわりの計画を立てているのだ。
次は小さいひまわりを選ぶ予定なのだが、室内で水耕栽培とかできるのだろうか。
今度調べておこう。近いうちに、気が向いたら。